アンベードカル博士改宗50周年 改宗広場まで記録的行進 50万人以上集う   
仏教徒はインド人ロの1%  博士の「仏国土」誓願を胸に

【報告】 サンガラトナ・法天・マナケ師     
天台宗インド禅定林住職      

 インド憲法の父とされるアンべードカル博士(1891-1956)。“不可触民”としてさまざまな差別や偏見に遭遇し、ついにはヒンドゥ教から仏敦へと改宗した。多くの不可触民もこれに従い、彼らは新仏教徒と呼ばれる。この50周年式典に参加したインド出身の天台宗僧侶、サンガラトナ・法天・マナケ師に報告いただいた。

改宗広場に集まった仏教徒たち。円内はアンベードカル博士
 同じ人間として生を受けたにもかかわらず卑しい不可触民の家庭の生まれだとして差別、抑圧するヒンドゥ教を捨て、新天地を求め、将来に夢と希望を託し、アンベードカル博士を指導者と仰ぐ50万人以上の人たちが仏教に改宗以来、11月2日をもってちょうど50年になりました。
 この50年、アンベードカル博士が夢に見た現実は多くの人たちの尽力により一歩、二歩は前進しましたが、あぐらをかき双手をあげて喜ぶ状況にはいたっていません。
 しかしながら、50周年という記念すべき時を迎えるに当たり、仏教徒の喜びは頂点に達していました。老人は50年前を思い浮かべ、青年たちは50周年に立ち合うことのできた喜びをかみしめていました。ナグプール全土いたるところに五色の仏教旗が掲げられ、行きかうオートリクシャも車に高々と旗を掲げ行事を一層盛り上げました。
 また、仏教徒居住区の四つ角には「50周年万歳」等と書かれた大きな看板がいくつも掲げられ、ナグプール市民の喜びを垣間見ることができました。今年も前前日の9月30日からインド全国からの参拝者が例年の3倍、50万人が参拝に来るだろうとの予想から、マハラシュトラ州及びナグプール市は行政レベルで駅、バス停からあるいはナグプール市内のいたるところからディクシャブ−ミ・改宗広場行きの口ーカルバスを増便したり往来に便宜をはかり、安全に余念無く、医療チームを配置。
 民間レベルでは、仏教徒に限ることなく、ヒンドゥ、イスラム、シーク教等の宗教団体が軽食を配り、炊き出しをし食事を提供、飲料水を配る人がいれば、多くの人が旅費だけを握りしめて来ているため子供には牛乳を配る団体もあれば、大人にも栄養がつくようにと果物を配布している団体がありました。
 改宗広場近くのいたるところで公共民間に限らず学校等施設及び多くの仏教寺院が宿泊用に解放され遠来の参拝者に一時の安息を提供しました。
 季節外れの雨の続く日々にもかかわらずマハラシュトラ全州は勿論のこと、インド全土、ネパール国境の村から汽車を乗り継ぎ数日かけて改宗広場に来たという人たちもいました。国鉄が増便したにもかかわず、予想通り30日の朝からナグプール駅及びバス停に到着する全ての汽車及びバスは五色の旗を持った地方からの参拝者で足の踏み場もないほどのごった返しようでした。
 彼らの目的は改宗広場主催者に謁見することでもなく、どのような行事が催されていようとも左右されるわけではありません。総人口の1%と言われる仏教徒、自分たちの村に帰ると極端なところでは数家族しか住んでいない寂しい思いをしています。
 この様な境遇にある人たちが同じ仏教を信仰する多くの仲間たちとの出会いによって孤独を癒すことができ、揺らいでいく気持を再び奮い立たせます。また、この参拝は地獄のような人生から差別を否定する仏教社会に導いてくれた釈尊及びアンベードカル博士に対する感謝を述べる日でもあり、博士が願った仏国土を作るための誓願の日でもあります。
 50年の特記すべき行事は行進です。改宗広場の運営団体及び改宗式総監督をつとめるアンベードカル博士財団等が多くの団体に声をかけナグプール市のそれぞれの地区から広場までの行進が行われ、先頭が広場に到達しているのに後尾は8キロ後ろにあるというような記録的な行進が行われました。
 五色の旗を片手に象に乗った若い女性が、2度と我々は如何なる抑圧にも屈することなく、平等社会を築き上げるために全身全霊を尽くすと改宗50周年に際し誓いを立てている様子には大変な勇敢さを感じました。
 遠来からこの日にあわせて参拝に来る人と、それを迎えるナグプールの人たちの釈尊及びアンベードカル博士に対する信仰には微塵のかげりもありません。
 50年前にアンベードカル博士が、釈尊の教えにのっとって生きていくことを誓願公表された、その誓願を現実化するためにひとびとは集まり、生きています。
 この信仰民衆の気持ちを最優先にしなければ博士の夢はかなえられるものではありません。
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